雪のいと高う降りたるを・枕草子

雪のいと高う降りたるを、
雪がたいそう高く降り積もっているのに、
・雪 … 名詞
・の … 格助詞
・いと … 副詞
いと … 非常に、たいそう
・高う … ク活用の形容詞「高し」の連用形(音便)
・降り … ラ行四段活用の動詞「降る」の連用形
・たる … 存続の助動詞「たり」の連体形
・を … 接続助詞

例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、
いつもと違って御格子をお下げして、角火鉢に火をおこして、
・例 … 名詞
・なら … 断定の助動詞「なり」の未然形
・ず … 打消の助動詞「ず」の連用形
○例ならず … 普通と異なって
・御格子(みこうし) … 名詞
・参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
参る … お下げする(謙譲語) ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意
・て … 接続助詞
・炭櫃(すびつ) … 名詞
○炭櫃 … 角火鉢
・に … 格助詞
・火 … 名詞
・おこし … サ行四段活用の動詞「おこす」の連用形
・て … 接続助詞

物語などして、集まりさぶらふに、
雑談などして、集まってお仕えしていると、
・物語 … 名詞
物語 … 話すこと、雑談
・など … 副助詞
・し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・て … 接続助詞
・集まり … ラ行四段活用の動詞「集まる」の連用形
・候(さぶら)ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連体形
候ふ … お仕えする(謙譲語) ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意
・に … 接続助詞

「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ。」と仰せらるれば、
「少納言よ、香炉峰の雪は、どのようでしょう。」とおっしゃるので、
・少納言 … 名詞
・よ … 間投助詞
・香炉峰(こうろほう) … 名詞
・の … 格助詞
・雪 … 名詞
・いかなら … ナリ活用の形容動詞「いかなり」の未然形
○いかなり … どのようである
・む … 推量の助動詞「む」の終止形
・と … 格助詞
・仰(おお)せ … サ行下二段活用の動詞「仰す」の未然形
仰す … おっしゃる(尊敬語) ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意
・らるれ … 尊敬の助動詞「らる」の已然形 ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意
・ば … 接続助詞
「香炉峰の雪、いかならむ」とは、何を求めた問いなのか。 ⇒ 外の高く降り積もった雪を見るために、御格子と御簾を上げること。

御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。
御格子を上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、お笑いになる。
・御格子 … 名詞
・上げ … ガ行下二段活用の動詞「上ぐ」の未然形
・させ … 使役の助動詞「さす」の連用形
・て … 接続助詞
・御簾(みす) … 名詞
・を … 格助詞
・高く … ク活用の形容詞「高し」の連用形
・上げ … ガ行上二段活用の動詞「上ぐ」の連用形
・たれ … 完了の助動詞「たり」の已然形
・ば … 接続助詞
・笑は … ハ行四段活用の動詞「笑ふ」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の終止形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 作者から中宮(定子)への敬意

人々も、「さることは知り、
人々も、「そのようなことは知り、
・人々 … 名詞
・も … 係助詞
・さる … 連体詞
さる … そのような
・こと … 名詞
・は … 係助詞
・知り … ラ行四段活用の動詞「知る」の連用形
「さること」とは何か。 ⇒ 白居易の詩の「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」という一節。
「さること」とはどのようなことか。 ⇒ 白居易が「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」と詠んでいること。

歌などにさへうたへど、思ひこそ寄らざりつれ。
歌などにまで詠むけれど、思いも寄らなかった。
・歌 … 名詞
・など … 副助詞
・に … 格助詞
・さへ … 副助詞
・歌へ … ハ行四段活用の動詞「歌ふ」の已然形
・ど … 接続助詞
・思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・こそ … 係助詞・強意
・寄ら … ラ行四段活用の動詞「寄る」の未然形
・ざり … 打消の助動詞「ず」の連用形
・つれ … 完了の助動詞「つ」の已然形(音便)
「思ひこそ寄らざりつれ」を、内容がわかるように現代語訳せよ。 ⇒ 降り積もった雪を見るために御格子と御簾を上げることなど思いも寄らなかった。

なほ、この宮の人には、さべきなめり。」と言ふ。
やはり、中宮様にお仕えする者として、ふさわしい人のようだ。」と言う。
・なほ … 副詞
なほ … やはり
・こ … 代名詞
・の … 格助詞
・宮 … 名詞
・の … 格助詞
・人 … 名詞
・に … 格助詞
・は … 係助詞
・さ … ラ行変格活用の動詞「さり」の連体形
さる ⇒ さん(撥音便) ⇒ さ(無表記)
・べき … 当然の助動詞「べし」の連体形
さるべき … ふさわしい
・な … 断定の助動詞「なり」の連体形
なる ⇒ なん(撥音便) ⇒ な(無表記)
・めり … 推定の助動詞「めり」の終止形
・と … 格助詞
・言ふ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の終止形

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