静その日は、白拍子多く知りたれども、
静は、その日は、白拍子をたくさん知っていたけれども、
・静(しずか) … 名詞
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・日 … 名詞
・は … 係助詞
・白拍子(しらびようし) … 名詞
・多く … ク活用の形容詞「多し」の連用形
・知り … ラ行四段活用の動詞「知る」の連用形
・たれ … 存続の助動詞「たり」の已然形
・ども … 接続助詞
ことに心に染むものなれば、
とくに心に深く感じるものなので、
・ことに … 副詞
・心 … 名詞
・に … 格助詞
・染(そ)む … マ行四段活用の動詞「染む」の連体形
〇心に染む … 心に深く感じる
・もの … 名詞
・なれ … 断定の助動詞「なり」の已然形
・ば … 接続助詞
しんむじやうの曲といふ白拍子の上手なりければ、
しんむじょうの曲という白拍子の達人であった、それで、
・しんむじやうの曲 … 名詞
・と … 格助詞
・いふ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の連体形
・白拍子 … 名詞
・の … 格助詞
・上手 … 名詞
〇上手 … 達人
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
心も及ばぬ声色にて、はたと上げてぞ歌ひける。
(その曲を)想像もできない声色で、いきなり声を張り上げて歌った。
・心 … 名詞
・も … 係助詞
・及ば … バ行四段活用の動詞「及ぶ」の未然形
・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・声色(こわいろ) … 名詞
〇声色 … 声の音色
・にて … 格助詞
・はたと … 副詞
〇はたと … いきなり
・上げ … ガ行下二段活用の動詞「上ぐ」の連用形
・て … 接続助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・歌ひ … ハ行四段活用の動詞「歌ふ」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)
上下「あつ。」と感ずる声、雲に響くばかりなり。
身分の高い人々と低い人々の「あっ。」と感嘆する声が、雲に響くほどである。
・上下 … 名詞
〇上下 … 身分の高い人々と低い人々
・あつ … 感動詞
・と … 格助詞
・感ずる … サ行変格活用の動詞「感ず」の連体形
〇感ず … 感嘆する
・声 … 名詞
・雲 … 名詞
・に … 格助詞
・響く … カ行四段活用の動詞「響く」の連体形
・ばかり … 副助詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の終止形
近くは聞きて感じけり。
近く(の者)は聞いて感嘆した。
・近く … 名詞
・は … 係助詞
・聞き … カ行四段活用の動詞「聞く」の連用形
・て … 接続助詞
・感じ … サ行変格活用の動詞「感ず」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形
声も聞こえぬ上の山までも、さこそあるらめとて感じける。
声も聞こえない上の山(の者)までも、きっとそうだろうと思って感嘆した。
・声 … 名詞
・も … 係助詞
・聞こえ … ヤ行下二段活用の動詞「聞こゆ」の未然形
・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・上 … 名詞
・の … 格助詞
・山 … 名詞
・まで … 副助詞
・も … 係助詞
・さ … 副詞
・こそ … 係助詞・強意
・ある … ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形
・らめ … 現在推量の助動詞「らむ」の已然形(結び)
・とて … 格助詞
・感じ … サ行変格活用の動詞「感ず」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
しんむじやうの曲、半らばかり数へたりけるところに、祐経心なしとや思ひけん、
しんむじょうの曲を半分ほど歌っていた時に、祐経は分別がないと思ったのだろうか、
・しんむじやうの曲 … 名詞
・半(なか)ら … 名詞
〇半ら … 半分
・ばかり … 副助詞
・数へ … ハ行下二段活用の動詞「数ふ」の連用形
・たり … 存続の助動詞「たり」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・ところ … 名詞
・に … 格助詞
〇数へたりけるところに … 歌っていた時に
・祐経(すけつね) … 名詞
・心なし … ク活用の形容詞「心なし」の終止形
〇心なし … 分別がない
・と … 格助詞
・や … 係助詞・疑問
・思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・けん … 過去推量の助動詞「けん」の連体形(結び)
水干の袖を外して、せめをぞ打ちたりける。
水干の袖を外して、曲の最後の速い調子を打ったのだった。
・水干(すいかん) … 名詞
・の … 格助詞
・袖 … 名詞
・を … 格助詞
・外し … サ行四段活用の動詞「外す」の連用形
・て … 接続助詞
・せめ … 名詞
〇せめ … 曲の最後の速い調子
・を … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・打ち … タ行四段活用の動詞「打つ」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・ける … 詠嘆の助動詞「けり」の連体形(結び)
静、「君が代の。」と上げたりければ、人々これを聞きて、
静も、「君が代の。」と切り上げてしまったので、人々はこれを聞いて、
・静 … 名詞
・君 … 名詞
・が … 格助詞
・代 … 名詞
・の … 格助詞
・と … 格助詞
・上げ … ガ行下二段活用の動詞「上ぐ」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
・人々 … 名詞
・これ … 代名詞
・を … 格助詞
・聞き … カ行四段活用の動詞「聞く」の連用形
・て … 接続助詞
「情けなき祐経かな。いま一折舞はせよかし。」とぞ申しける。
「思いやりの心がない祐経だなあ。もう一折舞わせろよ。」と申しました。
・情けなき … ク活用の形容詞「情けなし」の連体形
〇情けなし … 思いやりの心がない
・祐経 … 名詞
・かな … 終助詞・詠嘆
〇かな … ~だなあ
・いま … 副詞
・一折(ひとおり) … 名詞
〇一折 … 舞踊や音楽のひとまとまりの部分
・舞は … ハ行四段活用の動詞「舞ふ」の未然形
・せよ … 使役の助動詞「す」の命令形
・かし … 終助詞・念を押す
〇かし … ~よ
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
〇申す … 「言ふ」の丁寧語 ⇒ 作者から読者への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)
「詮ずるところ、敵の前の舞ぞかし。思ふことを歌はばや。」と思ひて、
「しょせん敵の前の舞なんですよね。(できたら)思うことを歌いたい。」と思って、
・詮(せん)ずるところ … 副詞
〇詮ずるところ … しょせん
・敵(かたき) … 名詞
・の … 格助詞
・前 … 名詞
・の … 格助詞
・舞 … 名詞
・ぞ … 係助詞
・かし … 終助詞・自分に言い聞かせる
・思ふ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連体形
・こと … 名詞
・を … 格助詞
・歌は … ハ行四段活用の動詞「歌ふ」の未然形
・ばや … 終助詞・願望
〇ばや … (できたら)~したい
・と … 格助詞
・思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・て … 接続助詞
しづやしづ賤のをだまき繰り返し
静よ静よと、しずのおだまきを回すように、繰り返し(九郎様が)私の名を呼んだ
・しづ … 名詞
・や … 間投助詞
・しづ … 名詞
・賤(しず) … 名詞
・の … 格助詞
・をだまき … 名詞
〇しづのをだまき … 「繰る」の序詞
・繰り返し … サ行四段活用の動詞「繰り返す」の連用形
昔を今になすよしもがな
昔を今にする方法があったらなあ。
・昔 … 名詞
・を … 格助詞
・今 … 名詞
・に … 格助詞
・なす … サ行四段活用の動詞「なす」の連体形
・よし … 名詞
・もがな … 終助詞・願望
〇もがな … ~があったらなあ
吉野山嶺の白雪踏み分けて入りにし人の跡ぞ恋しき
吉野山の嶺の白雪を踏み分けて、山に入ってしまった人の跡が恋しいことよ。
・吉野山 … 名詞
・嶺(みね) … 名詞
・の … 格助詞
・白雪 … 名詞
・踏み分け … カ行下二段活用の動詞「踏み分く」の連用形
・て … 接続助詞
・入り … ラ行四段活用の動詞「入る」の連用形
・に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・人 … 名詞
・の … 格助詞
・跡 … 名詞
・ぞ … 係助詞・強意
・恋しき … シク活用の形容詞「恋し」の連体形(結び)
と歌ひたりければ、鎌倉殿、御簾をさつと下したまひけり。
と歌ってしまったので、鎌倉殿は、御簾をさっと下ろしなさった。
・と … 格助詞
・歌ひ … ハ行四段活用の動詞「歌ふ」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
・鎌倉殿 … 名詞
・御簾(みす) … 名詞
・を … 格助詞
・さつと … 副詞
・下し … サ行四段活用の動詞「下す」の連用形
・たまひ … ハ行四段活用の動詞「たまふ」の連用形
〇たまふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 作者から頼朝への敬意
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形
鎌倉殿、「白拍子は興醒めたるものにてありけるや。
鎌倉殿は、「白拍子とは面白みがないものなんだなあ。
・鎌倉殿 … 名詞
・白拍子 … 名詞
・は … 係助詞
・興(きよう) … 名詞
〇興 … 面白いこと
・醒(さ)め … マ行下二段活用の動詞「醒む」の連用形
〇醒め … 薄れる、なくなる
・たる … 存続の助動詞「たり」の連体形
・もの … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・て … 接続助詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・ける … 詠嘆の助動詞「けり」の連体形
・や … 間投助詞
舞の舞ひやう、謡の歌ひやう怪しからず。
舞の舞い方、歌の歌い方が普通ではない。
・舞 … 名詞
・の … 格助詞
・舞ひ様 … 名詞
〇様 … 動作の仕方
・謡(うたい) … 名詞
〇謡 … 節を付けてうたう詩歌類の総称
・の … 格助詞
・歌ひ様 … 名詞
・怪(け)しから … シク活用の形容詞「怪し」の未然形
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
〇怪しからず … 普通の状態ではない
頼朝田舎人なれば、聞き知らじとて歌ひたるか。
頼朝が田舎者だから、聞いてもわからないだろうと思って歌ったのか。
・頼朝 … 名詞
・田舎人(いなかびと) … 名詞
・なれ … 断定の助動詞「なり」の已然形
・ば … 接続助詞
・聞き知ら … ラ行四段活用の動詞「聞き知る」の未然形
〇聞き知る … 聞いてわかる
・じ … 打消推量の助動詞「じ」の終止形
・とて … 格助詞
・歌ひ … ハ行四段活用の動詞「歌ふ」の連用形
・たる … 完了の助動詞「たり」の連体形
・か … 係助詞
『賤のをだまき繰り返し』とは、頼朝が世尽きて、九郎が世になれとや。
『賤のをだまき繰り返し』とは、頼朝の世が終って、九郎の世になれというのか。
・賤 … 名詞
・の … 格助詞
・をだまき … 名詞
・繰り返し … サ行四段活用の動詞「繰り返す」の連用形
・と … 格助詞
・は … 係助詞
・頼朝 … 名詞
・が … 格助詞
・世 … 名詞
・尽き … カ行上二段活用の動詞「尽く」の連用形
・て … 接続助詞
・九郎 … 名詞
・が … 格助詞
・世 … 名詞
・に … 格助詞
・なれ … ラ行四段活用の動詞「なる」の命令形
・と … 格助詞
・や … 係助詞
あはれおほけなく思ひたるものかな。
ああ、身のほどを知らないで思っているものだなあ。
・あはれ … 感動詞
〇あはれ … ああ
・おほけなく … ク活用の形容詞「おほけなし」の連用形
〇おほけなし … 身のほど知らずである
・思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・たる … 存続の助動詞「たり」の連体形
・もの … 名詞
・かな … 終助詞・詠嘆
『吉野山峰の白雪踏み分けて入りにし人の』とは、
『吉野山峯の白雪踏み分けて入りにし人の』とは、
・吉野山 … 名詞
・峰 … 名詞
・の … 格助詞
・白雪 … 名詞
・踏み分け … カ行下二段活用の動詞「踏み分く」の連用形
・て … 接続助詞
・入り … ラ行四段活用の動詞「入る」の連用形
・に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・人 … 名詞
・の … 格助詞
・と … 格助詞
・は … 係助詞
例へば頼朝九郎を攻め落とすといへども、いまだありとござんなれ。
たとえば頼朝が九郎を攻め落したといっても、いまだに健在だというのだな。
・例へば … 副詞
・頼朝 … 名詞
・九郎 … 名詞
・を … 格助詞
・攻め落とす … サ行四段活用の動詞「攻め落とす」の終止形
・と … 格助詞
・いへ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の已然形
・ども … 接続助詞
・いまだ … 副詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の終止形
・と … 格助詞
・ござんなれ … 連語
〇いまだありとござんなれ … いまだに健在だというのだな
あ憎し憎し。」とぞ仰せられける。
ああ、憎い憎い。」とおっしゃられた。
・あ … 感動詞
〇あ … ああ
・憎し … ク活用の形容詞「憎し」の終止形
・憎し … ク活用の形容詞「憎し」の終止形
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・仰せ … サ行下二段活用の動詞「仰す」の未然形
〇仰す … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 作者から頼朝への敬意
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)
二位殿これをきこしめして、
二位殿はこれをお聞きになられて、
・二位殿 … 名詞
・これ … 代名詞
・を … 格助詞
・きこしめし … サ行四段活用の動詞「きこしめす」の連用形
〇きこしめす … 「聞く」の尊敬語 ⇒ 作者から二位殿への敬意
・て … 接続助詞
「同じ道の者ながらも、情けありてこそ舞ひて候へ。
「同じ芸の道の者といっても、風流心があってこそ舞ったのでございます。
・同じ … シク活用の助動詞「同じ」の連体形
・道 … 名詞
〇道 … 芸の道
・の … 格助詞
・者 … 名詞
・ながら … 接続助詞
・も … 係助詞
・情け … 名詞
〇情け … 風流心
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・て … 接続助詞
・こそ … 係助詞・強意
・舞ひ … ハ行四段活用の動詞「舞ふ」の連用形
・て … 接続助詞
・候(そうら)へ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の已然形(結び)
〇候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
静ならざらん者はいかでか御前にて舞ひ候ふべき。
静以外の者はどうして(頼朝様の)御前で舞いましょうか。
・静 … 名詞
・なら … 断定の助動詞「なり」の未然形
・ざら … 打消の助動詞「ず」の未然形
・ん … 婉曲の助動詞「ん」の連体形
・者 … 名詞
・は … 係助詞
・いかでか … 連語
・御前(おまえ) … 名詞
・にて … 格助詞
・舞ひ … ハ行四段活用の動詞「舞ふ」の連用形
・候ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の終止形
〇候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
・べき … 推量の助動詞「べし」の連体形
たとひいかなる不思議をも申し候へ、
たとえどんな非常識なことを申し上げましても、
・たとひ … 副詞
・いかなる … ナリ活用の形容動詞「いかなり」の連体形
・不思議 … 名詞
〇不思議 … 非常識なこと
・を … 格助詞
・も … 係助詞
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
〇申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
・候へ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の已然形
〇候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
女ははかなき者なれば、思しめし
女はあさはかな者ですから、(そのように)お考えなさり
・女 … 名詞
・は … 係助詞
・はかなき … ク活用の形容詞「はかなし」の連体形
〇はかなし … あさはかである
・者 … 名詞
・なれ … 断定の助動詞「なり」の已然形
・ば … 接続助詞
・思(おぼ)しめし … サ行四段活用の動詞「思しめす」の連用形
〇思しめす … 「思ふ」の尊敬語 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
許し候へ。」と申させたまひければ、
お許しなさいませ。」とおっしゃられたので、
・許し … サ行四段活用の動詞「許す」の連用形
・候へ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の命令形
〇候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 二位殿から頼朝への敬意
・と … 格助詞
・申さ … サ行四段活用の動詞「申す」の未然形
〇申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 作者から頼朝への敬意
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 作者から二位殿への敬意
・たまひ … ハ行四段活用の動詞「たまふ」の連用形
〇たまふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 作者から二位殿への敬意
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
御簾の片方を少し上げられたり。
(頼朝は)御簾のかたほうを少しお上げになった。
・御簾 … 名詞
・の … 格助詞
・片方(かたかた) … 名詞
・を … 格助詞
・少し … 副詞
・上げ … ガ行下二段活用の動詞「上ぐ」の未然形
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形 ⇒ 作者から頼朝への敬意
・たり … 完了の助動詞「たり」の終止形