公世の二位のせうとに・徒然草

公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは、
従二位の藤原公世の兄弟で、良覚僧正と申し上げた人は、
・公世(きんよ)の二位 … 名詞
・の … 格助詞
・せうと … 名詞
○せうと … 男の兄弟
・に … 格助詞
・良覚僧正(りようがくそうじよう) … 名詞
・と … 格助詞
・聞こえ … ヤ行下二段活用の動詞「聞こゆ」の連用形
聞こゆ … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から良覚僧正への敬意
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・は … 

きはめて腹あしき人なりけり。
非常に怒りっぽい人であった。
・きはめて … 
・腹あしき … シク活用の形容詞「腹あし」の連体形
○腹あし … おこりっぽい
・人 … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の連体形

坊の傍らに、大きなる榎の木のありければ、
僧坊のそばに、大きな榎があったので、
・坊(ぼう) … 名詞
○坊 … 僧のいる所
・の … 格助詞
・傍(かたわ)ら … 名詞
○傍ら … すぐ近く
・に … 格助詞
・大きなる … ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連体形
・榎(え)の木 … 名詞
・の … 格助詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

人、「榎の木の僧正」とぞ言ひける。
人は、「榎の僧正」と言った。
・人 … 名詞
・榎の木 … 名詞
・の … 格助詞
・僧正 … 名詞
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強調
・言ひ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)

この名、しかるべからずとて、かの木を切られにけり。
この名は、ふさわしくないと思って、その木を切ってしまいになられた。
・こ … 代名詞
・の … 格助詞
・名 … 名詞
・しかる … ラ行変格活用の動詞「しかり」の連体形
・べから … 適当の助動詞「べし」の未然形
○しかるべし … ふさわしい
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
・とて … 格助詞
・か … 代名詞
・の … 格助詞
・木 … 名詞
・を … 格助詞
・切ら … ラ行四段活用の動詞「切る」の未然形
 … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ 筆者から良覚僧正への敬意
・に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

その根のありければ、「きりくひの僧正」と言ひけり。
その根が残っていたので、「切り株の僧正」と言った。
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・根 … 名詞
・の … 格助詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
・きりくひ … 名詞
○きりくひ … 切り株
・の … 格助詞
・僧正 … 名詞
・と … 格助詞
・言ひ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、
よりいっそう腹を立てて、切り株を掘って捨ててしまったところ、
・いよいよ … 副詞
○いよいよ … ますます
・腹立ち … タ行四段活用の動詞「腹立つ」の連用形
・て … 接続助詞
・きりくひ … 名詞
・を … 格助詞
・掘り … ラ行四段活用の動詞「彫る」の連用形
・捨て … タ行下二段活用の動詞「捨つ」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

その跡、大きなる堀にてありければ、
その跡が、大きな堀として残っていたので、
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・跡(あと) … 名詞
・大きなる … ナリ活用の形容動詞「大きなり」の連体形
・堀 … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・て … 接続助詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

「堀池の僧正」とぞ言ひける。
「堀池の僧正」と言った。
・堀池(ほりけ) … 名詞
・の … 格助詞
・僧正 … 名詞
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強調
・言ひ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)

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