薩摩守忠度は、いづくよりや帰られたりけん、
薩摩守忠度は、どこから都に引き返されたのだろうか、
・薩摩守忠度(さつまのかみただのり) … 名詞
・は … 係助詞
・いづく … 代名詞
○いづく … どこ
・より … 格助詞
・や … 係助詞・疑問
・帰ら … ラ行四段活用の動詞「帰る」の連用形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・けん … 過去推量の助動詞「けん」の連体形(結び)
侍五騎、童一人、わが身ともに七騎とつて返し、
侍五騎と、童一人と、自分と合わせて七騎で引き返し、
・侍(さぶらい) … 名詞
・五騎 … 名詞
・童(わらわ) … 名詞
・一人(いちにん) … 名詞
・わ … 代名詞
・が … 格助詞
・身 … 名詞
・とも … 名詞
・に … 格助詞
・七騎 … 名詞
・とつて返し … サ行四段活用の動詞「とつて返す」の連用形
五条三位俊成卿の宿所におはして見給へば、門戸を閉ぢて開かず。
五条三位俊成卿の住居にいらっしゃってご覧になると、門戸を閉じて開かない。
・五条三位俊成卿(ごじようのさんみしゆんぜいきよう) … 名詞
・の … 格助詞
・宿所 … 名詞
・に … 格助詞
・おはし … サ行変格活用の動詞「おはす」の連用形
○おはす … 「来」の尊敬語 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・て … 接続助詞
・見 … マ行上一段活用の動詞「見る」の連用形
・給へ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の已然形
○給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ば … 接続助詞
・門戸 … 名詞
・を … 格助詞
・閉ぢ … ダ行上二段活用の動詞「閉づ」の連用形
・て … 接続助詞
・開か … カ行四段活用の動詞「開く」の未然形
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
「忠度。」と名のり給へば、
「忠度。」とお名のりになると、
・忠度 … 名詞
・と … 格助詞
・名のり … ラ行四段活用の動詞「名のる」の連用形
・給へ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の已然形
○給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ば … 接続助詞
「落人帰り来たり。」とて、その内騒ぎ合へり。
「落ち武者が帰ってきた。」と言って、邸内で騒ぎ合っている。
・落人(おちゆうど) … 名詞
・帰り来 … カ行変格活用の動詞「帰り来」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の終止形
・とて … 格助詞
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・内 … 名詞
・騒ぎ合へ … ハ行四段活用の動詞「騒ぎ合ふ」の命令形
・り … 存続の助動詞「り」の終止形
薩摩守馬より降り、自ら高らかにのたまひけるは、
薩摩守は馬から下り、自分で大声でおっしゃることには、
・薩摩守 … 名詞
・馬 … 名詞
・より … 格助詞
・降り … ラ行上二段活用の動詞「降りる」の連用形
・自ら … 副詞
・高らかに … ナリ活用の形容動詞「高らかなり」の連用形
・のたまひ … ハ行四段活用の動詞「のたまふ」の連用形
○のたまふ … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・は … 係助詞
「別の子細候はず。
「特別の事情はございません。
・別 … 名詞
○別(べち) … 特別
・の … 格助詞
・子細 … 名詞
○子細 … くわしい事情
・候(そうら)は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
三位殿に申すべきことあつて、忠度が帰り参つて候ふ。
三位殿に申し上げたいことがあって、忠度が帰って参ったのでございます。
・三位殿 … 名詞
・に … 格助詞
・申す … サ行四段活用の動詞「申す」の終止形
○申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・べき … 意志の助動詞「べし」の連体形
・こと … 名詞
・あつ … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形(音便)
・て … 接続助詞
・忠度 … 名詞
・が … 格助詞
・帰り参つ … ラ行四段活用の動詞「帰り参る」の連用形(音便)
○帰り参る … 「帰り来」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・て … 接続助詞
・候ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の終止形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
門を開かれずとも、この際まで立ち寄らせ給へ。」とのたまへば、
門をお開きにならないにしても、このそばまでお立ち寄りください。」とおっしゃると、
・門(かど) … 名詞
・を … 格助詞
・開か … カ行四段活用の動詞「開く」の未然形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の未然形 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
・とも … 接続助詞
・こ … 代名詞
・の … 格助詞
・際(きわ) … 名詞
・まで … 副助詞
・立ち寄ら … ラ行四段活用の動詞「立ち寄る」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・給へ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の命令形
○給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・と … 格助詞
・のたまへ … ハ行四段活用の動詞「のたまふ」の已然形
○のたまふ … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ば … 接続助詞
俊成卿、「さることあるらん。その人ならば苦しかるまじ。
俊成卿は、「しかるべき理由があるのだろう。その人ならばさしつかえあるまい。
・俊成卿 … 名詞
・さる … 連体詞
○さる … しかるべき
・こと … 名詞
・ある … ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形
・らん … 現在推量の助動詞「らん」の終止形
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・人 … 名詞
・なら … 断定の助動詞「なり」の未然形
・ば … 接続助詞
・苦しかる … シク活用の形容詞「苦し」の連体形
○苦し … 差し支えがある
・まじ … 打消推量の助動詞「まじ」の終止形
入れ申せ。」とて、門を開けて対面あり。
お入れ申し上げよ。」と言って、門を開けてご対面になる。
・入れ … ラ行下二段活用の動詞「入る」の連用形
・申せ … サ行四段活用の動詞「申す」の命令形
○申す … 謙譲の補助動詞 ⇒ 俊成卿から忠度への敬意
・とて … 格助詞
・門 … 名詞
・を … 格助詞
・開け … カ行下二段活用の動詞「開く」の連用形
・て … 接続助詞
・対面 … 名詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の終止形
ことの体何となうあはれなり。
その場の様子には、全体として、しみじみとした感じがある。
・こと … 名詞
・の … 格助詞
・体(てい) … 名詞
○体 … ありさま
・何 … 代名詞
・と … 格助詞
・なう … ク活用の形容詞「なし」の連用形(音便)
・あはれなり … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の終止形
○あはれなり … しみじみとした情趣がある
薩摩守のたまひけるは、「年ごろ申し承つて後、
薩摩守がおっしゃるには、「長年和歌のご指導をいただいて以来、
・薩摩守 … 名詞
・のたまひ … ハ行四段活用の動詞「のたまふ」の連用形
○のたまふ … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・は … 係助詞
・年ごろ … 名詞
○年ごろ … 長年の間
・申し承つ … ラ行四段活用の動詞「申し承る」の連用形(音便)
○申し承る … 「申し受く」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・て … 接続助詞
・後 … 名詞
おろかならぬ御事に思ひ参らせ候へども、
いいかげんではない御事に思い申し上げておりますけれども、
・おろかなら … ナリ活用の形容動詞「おろかなり」の未然形
・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・御事 … 名詞
・に … 格助詞
・思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・参らせ … サ行下二段活用の動詞「参らす」の連用形
○参らす … 謙譲の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・候へ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の已然形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ども … 接続助詞
この二、三年は、京都の騒ぎ、国々の乱れ、
この二、三年は、京都の騒ぎ、国々の乱れ、
・こ … 代名詞
・の … 格助詞
・二、三年 … 名詞
・は … 係助詞
・京都 … 名詞
・の … 格助詞
・騒ぎ … 名詞
・国々 … 名詞
・の … 格助詞
・乱れ … 名詞
しかしながら当家の身の上のことに候ふ間、
そのまますべて我が一門の身の上のことでございますので、
・しかしながら … 副詞
・当家 … 名詞
・の … 格助詞
・身 … 名詞
・の … 格助詞
・上 … 名詞
・の … 格助詞
・こと … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・候ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連体形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・間 … 名詞
○間 … ~ゆえに
疎略を存ぜずといへども、
おろそかには思っておりませんといっても、
・疎略(そらく) … 名詞
・を … 格助詞
・存ぜ … サ行変格活用の動詞「存ず」の未然形
○存ず … 「思ふ」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
・と … 格助詞
・いへ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の已然形
・ども … 接続助詞
常に参り寄ることも候はず。
いつもおそばに参上することもございませんでした。
・常に … 副詞
・参り寄る … ラ行四段活用の動詞「参り寄る」の連体形
○参り寄る … 「寄る」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・こと … 名詞
・も … 係助詞
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形
君すでに都を出でさせ給ひぬ。
主上はすでに都をお出になりました。
・君 … 名詞
・すでに … 副詞
・都 … 名詞
・を … 格助詞
・出で … ダ行下二段活用の動詞「出づ」の連用形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 忠度から主上への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
○給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 忠度から主上への敬意
・ぬ … 完了の助動詞「ぬ」の終止形
一門の運命はや尽き候ひぬ。
一門の運命はすでに尽きてしまいました。
・一門 … 名詞
・の … 格助詞
・運命 … 名詞
・はや … 副詞
・尽き … カ行上二段活用の動詞「尽く」の連用形
・候ひ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連用形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ぬ … 完了の助動詞「ぬ」の終止形
撰集のあるべきよし承り候ひしかば、生涯の面目に、
勅撰和歌集の編集があるはずだということをお聞きしましたので、生涯の名誉に、
・撰集(せんじゆう) … 名詞
・の … 格助詞
・ある … ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形
・べき … 推量の助動詞「べし」の連体形
・よし … 名詞
・承り … ラ行四段活用の動詞「承る」の連用形
○承る … 「聞く」の謙譲語 ⇒ 忠度から帝への敬意
・候ひ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連用形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・しか … 過去の助動詞「き」の已然形
・ば … 接続助詞
・生涯 … 名詞
・の … 格助詞
・面目 … 名詞
・に … 格助詞
一首なりとも御恩をかうぶらうど存じて候ひしに、
一首なりともご恩情をいただきたいと思っておりましたのに、
・一首 … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の終止形
・とも … 接続助詞
・御恩 … 名詞
・を … 格助詞
・かうぶら … ラ行四段活用の動詞「かうぶる」の連用形
・う … 意志の助動詞「う」の終止形
・ど … 格助詞
・存じ … サ行変格活用の動詞「存ず」の連用形
○存ず … 「思ふ」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・て … 接続助詞
・候ひ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連用形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・に … 接続助詞
やがて世の乱れ出で来て、その沙汰なく候ふ条、
すぐに世の乱れが起こって、その命令がございませんことは、
・やがて … 副詞
・世 … 名詞
・の … 格助詞
・乱れ … 名詞
・出で来 … カ行変格活用の動詞「出で来」の連用形
・て … 接続助詞
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・沙汰(さた) … 名詞
・なく … ク活用の形容詞「なし」の連用形
・候ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連体形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・条 … 名詞
ただ一身の嘆きと存ずる候ふ。
ただもう私にとっての嘆きと思っております。
・ただ … 副詞
・一身 … 名詞
・の … 格助詞
・嘆き … 名詞
・と … 格助詞
・存ずる … サ行変格活用の動詞「存ず」の連体形
○存ず … 「思ふ」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・候(ぞうろ)ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の終止形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
世静まり候ひなば、勅撰の御沙汰候はんずらん。
世が静まりましたならば、勅撰のご命令がございましょう。
・世 … 名詞
・静まり … ラ行四段活用の動詞「静まる」の連用形
・候ひ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連用形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・な … 完了の助動詞「ぬ」の未然形
・ば … 接続助詞
・勅撰(ちよくせん) … 名詞
・の … 格助詞
・御沙汰 … 名詞
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・んず … 推量の助動詞「んず」の終止形
・らん … 現在推量の助動詞「らん」の終止形
これに候ふ巻物のうちにさりぬべきもの候はば、
ここにございます巻物の中に入集するのに適当なものがございますならば、
・これ … 代名詞
・に … 格助詞
・候ふ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連体形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・巻物 … 名詞
・の … 格助詞
・うち … 名詞
・に … 格助詞
・さり … ラ行変格活用の動詞「さり」の連用形
・ぬ … 強意の助動詞「ぬ」の終止形
・べき … 適当の助動詞「べし」の連体形
・もの … 名詞
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ば … 接続助詞
一首なりとも御恩をかうぶつて、草の陰にてもうれしと存じ候はば、
一首だけでもご恩情をいただいて、墓の下でもうれしいと思いましたならば、
・一首 … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の終止形
・とも … 接続助詞
・御恩 … 名詞
・を … 格助詞
・かうぶつ … ラ行四段活用の動詞「かうぶる」の連用形(音便)
・て … 接続助詞
・草 … 名詞
・の … 格助詞
・陰 … 名詞
・にて … 格助詞
・も … 係助詞
・うれし … シク活用の形容詞「うれし」の終止形
・と … 格助詞
・存じ … サ行変格活用の動詞「存ず」の連用形
○存ず … 「思ふ」の謙譲語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 丁寧の補助動詞 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・ば … 接続助詞
遠き御守りでこそ候はんずれ。」とて、
遠いあの世からお守りいたしましょう。」と言って、
・遠き … ク活用の形容詞「遠し」の連体形
・御守り … 名詞
・で … 断定の助動詞「なり」の連用形
・こそ … 係助詞・強調
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
○候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 忠度から俊成卿への敬意
・んずれ … 意志の助動詞「んず」の已然形(結び)
・とて … 格助詞
日ごろ詠みおかれたる歌どもの中に、
ふだん詠み置きなさった歌どもの中で、
・日ごろ … 名詞
・詠みおか … カ行四段活用の動詞「詠みおく」の未然形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・たる … 完了の助動詞「たり」の連体形
・歌ども … 名詞
・の … 格助詞
・中 … 名詞
・に … 格助詞
秀歌とおぼしきを百余首、書き集められたる巻物を、
秀歌と思われる歌を百余首、書き集めなさった巻物を、
・秀歌 … 名詞
・と … 格助詞
・おぼしき … シク活用の形容詞「おぼし」の連体形
・を … 格助詞
・百余首 … 名詞
・書き集め … マ行下二段活用の動詞「書き集む」の連用形
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・たる … 完了の助動詞「たり」の連体形
・巻物 … 名詞
・を … 格助詞
今はとてうつ立たれける時、これを取つて持たれたりしが、
これが最後だと思って出発なさった時、これを取ってお待ちになっていたが、
・今 … 名詞
・は … 係助詞
・とて … 格助詞
・うつ立た … タ行四段活用の動詞「うつ立つ」の未然形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・時 … 名詞
・これ … 代名詞
・を … 格助詞
・取つ … ラ行四段活用の動詞「取る」の連用形(音便)
・て … 接続助詞
・持た … 行四段活用の動詞「持つ」の未然形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ 筆者から忠度への敬意
・たり … 存続の助動詞「たり」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・が … 接続助詞
鎧の引き合はせより取り出でて、俊成卿に奉る。
鎧の引き合わせから取り出して、俊成卿に差し上げる。
・鎧(よろい) … 名詞
・の … 格助詞
・引き合はせ … 名詞
・より … 格助詞
・取り出で … ダ行下二段活用の動詞「取り出づ」の連用形
・て … 接続助詞
・俊成卿 … 名詞
・に … 格助詞
・奉る … ラ行四段活用の動詞「奉る」の終止形
○奉る … 「与ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から俊成卿への敬意