花山天皇の出家・大鏡

次の帝、花山院の天皇と申しき。
次の帝は、花山院の天皇と申し上げました。
・次 … 名詞
・の … 格助詞
・帝 … 名詞
・花山(かさん)院の天皇 … 名詞
・と … 格助詞
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・き … 過去の助動詞「き」の終止形

冷泉院の第一の皇子なり。
冷泉院の第一皇子です。
・冷泉(れいぜん)院 … 名詞
・の … 格助詞
・第一の皇子(みこ) … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の終止形

御母、贈皇后宮懐子と申す。
御母君は、贈皇后宮懐子と申し上げます。
・御母 … 名詞
・贈皇后宮懐子(ぞうこうごうぐうかいし) … 名詞
・と … 格助詞
・申す … サ行四段活用の動詞「申す」の終止形
申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から贈皇后宮懐子への敬意

永観二年八月二十八日、位につかせ給ふ。
永観二年八月二十八日、位におつきになられました。
・永観(えいかん)二年 … 名詞
・八月二十八日 … 名詞
・位 … 名詞
・に … 格助詞
・つか … カ行四段活用の動詞「つく」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の終止形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意

御年十七。寛和二年丙戌六月二十二日の夜、
御年十七歳。寛和二年丙戌六月二十二日の夜、
・御年 … 名詞
・十七 … 名詞
・寛和(かんな)二年 … 名詞
・丙戌(ひのえいぬ) … 名詞
・六月二十二日 … 名詞
・の … 格助詞
・夜 … 名詞

あさましく候ひしことは、人にも知らせさせ給はで、
意外で驚きましたことは、誰にもお知らせにならないで、
・あさましく … シク活用の形容詞「あさまし」の連用形
あさまし … 意外である
・候(さぶら)ひ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の連用形
候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ 筆者から読者への敬意
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・こと … 名詞
・は … 係助詞
・人 … 名詞
 … 他の人
・に … 格助詞
・も … 係助詞
・知ら … ラ行四段活用の動詞「知る」の未然形
・せ … 使役の助動詞「す」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給は … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の未然形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・で … 接続助詞

みそかに花山寺におはしまして、御出家入道せさせ給へりしこそ。
ひそかに花山寺においでになって、ご出家入道なさったことです。
・みそかに … ナリ活用の形容動詞「みそかなり」の連用形
○みそかなり … こっそりとするさま
・花山寺(はなやまでら・かさんじ) … 名詞
・に … 格助詞
・おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
おはします … 「行く」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞
・御出家(おおんすけ) … 名詞
・入道 … 名詞
・せ … サ行変格活用の動詞「す」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給へ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の已然形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・り … 完了の助動詞「り」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・こそ … 係助詞

御年十九。世を保たせ給ふこと二年。
御年十九歳。世をお治めになったのは二年間。
・御年 … 名詞
・十九 … 名詞
・世 … 名詞
・を … 格助詞
・保た … タ行四段活用の動詞「保つ」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連体形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・こと … 名詞
・二年 … 名詞

そののち二十二年おはしましき。
その後二十二年間ご存命でいらっしゃいました。
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・のち … 名詞
・二十二年 … 名詞
・おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
おはします … 「あり」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・き … 過去の助動詞「き」の終止形

あはれなることは、おりおはしましける夜は、
しみじみと心痛む思いのしますことは、ご退位なさった夜は、
・あはれなる … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連体形
・こと … 名詞
・は … 係助詞
・おり … ラ行上二段活用の動詞「おる」の連用形
○おる … 天皇が位を退く
・おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
おはします … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・夜 … 名詞
・は … 係助詞

藤壷の上の御局の小戸より出でさせ給ひけるに、
藤壺の上の御局の小戸からお出ましになられたところ、
・藤壷(ふじつぼ)の上の御局(みつぼね) … 名詞
・の … 格助詞
・小戸(こど) … 名詞
・より … 格助詞
・出で … ダ行下二段活用の動詞「出づ」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・に … 接続助詞

有明の月のいみじく明かかりければ、「顕証にこそありけれ。
有明の月がたいそう明るかったので、「あまりにあらわで気がひけるなあ。
・有明(ありあけ) … 名詞
・の … 格助詞
・月 … 名詞
・の … 格助詞
・いみじく … シク活用の形容詞「いみじ」の連用形
・明かかり … ク活用の形容詞「明かし」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞
・顕証(けんしよう)に … ナリ活用の形容動詞「顕証なり」の連用形
○顕証なり … はっきりとあらわなさま
・こそ … 係助詞・強意
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・けれ … 詠嘆の助動詞「けり」の已然形(結び)

いかがすべからむ。」と仰せられけるを、
どうしたらよいだろうか。」とおっしゃったのですが、
・いかが … 副詞
いかが … どのように〜か
・す … サ行変格活用の動詞「す」の終止形
・べから … 適当の助動詞「べし」の未然形
・む … 推量の助動詞「む」の連体形
・と … 格助詞
・仰せ … サ行下二段活用の動詞「仰す」の未然形
仰す … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・を … 接続助詞
何を「いかがすべからむ」と言っているのか ⇒ 今日の出家

「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。
「そうかといって、思いとどまりなさる理由はございません。
・さりとて … 接続詞
○さりとて … そうかといって
・とまら … ラ行四段活用の動詞「とまる」の未然形
○とまる … 立ち止まる
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の終止形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・べき … 当然の助動詞「べし」の連体形
・やう … 名詞
やう … 理由
・侍ら … ラ行変格活用の動詞「侍り」の未然形
侍り … 「あり」の丁寧語 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・ず … 打消の助動詞「ず」の終止形

神璽・宝剣渡り給ひぬるには。」と、
神璽、宝剣が(皇太子の方に)お渡りになってしまいましたからには。」と、
・神璽(しんし) … 名詞
・宝剣 … 名詞
・渡り … ラ行四段活用の動詞「渡る」の連用形
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・ぬる … 完了の助動詞「ぬ」の連体形
・に … 格助詞
・は … 係助詞
・と … 格助詞

粟田殿のさわがし申し給ひけるは、
粟田殿がせきたて申し上げなさったのは、
・粟田(あわた)殿 … 名詞
・の … 格助詞
・さわがし … サ行四段活用の動詞「さわがす」の連用形
○さわがす … せきたてる
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・は … 係助詞

まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づから取りて、
まだ天皇がお出ましにならなかった前に、(粟田殿)自身が(神璽、宝剣を)取って、
・まだ … 副詞
・帝 … 名詞
・出で … ダ行下二段活用の動詞「出づ」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・おはしまさ … サ行四段活用の動詞「おはします」の未然形
おはします … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ざり … 打消の助動詞「ず」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・先 … 名詞
・に … 格助詞
・手づから … 副詞
○手づから … 自分の手で
・取り … ラ行四段活用の動詞「取る」の連用形
・て … 接続助詞

春宮の御方に渡し奉り給ひてければ、
皇太子の御方にお渡し申し上げなさってしまっていたので、
・春宮(とうぐう) … 名詞
・の … 格助詞
・御方 … 名詞
・に … 格助詞
・渡し … サ行四段活用の動詞「渡す」の連用形
・奉り … ラ行四段活用の動詞「奉る」の連用形
奉る … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から春宮への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・て … 完了の助動詞「つ」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

帰り入らせ給はむことはあるまじく思して、
(天皇が)宮中にお帰りになるようなことはあってはならないとお思いになって、
・帰り入ら … ラ行四段活用の動詞「帰り入る」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給は … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の未然形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・む … 婉曲の助動詞「む」の連体形
・こと … 名詞
・は … 係助詞
・ある … ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形
・まじく … 打消当然の助動詞「まじ」の連用形
・思(おぼ)し … サ行四段活用の動詞「思す」の連用形
思す … 「思ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・て … 接続助詞

しか申させ給ひけるとぞ。
そのように申し上げなさったのだということです。
・しか … 副詞
しか … そういうふうに
・申さ … サ行四段活用の動詞「申す」の未然形
申す … 「言ふ」謙譲語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞
「しか」とは何をさしているか ⇒ 「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには。」の部分。

さやけき影を、まばゆく思し召しつるほどに、
(天皇は)明るい月の光を、気がひけるようにお思いになっているうちに、
・さやけき … ク活用の形容詞「さやけし」の連体形
○さやけし … 明るい
・影 … 名詞
 … 月の光
・を … 格助詞
・まばゆく … ク活用の形容詞「まばゆし」の連用形
まばゆし … 気がひける
・思し召し … サ行四段活用の動詞「思し召す」の連用形
思し召す … 「思ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・つる … 完了の助動詞「つ」の連体形
・ほど … 名詞
〜ほど … (〜している)うち
・に … 格助詞

月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、
月の表面に一群の雲がかかって、少し暗くなっていったので、
・月 … 名詞
・の … 格助詞
・顔 … 名詞
○顔 … 表面
・に … 格助詞
・むら雲 … 名詞
○むら雲 … 一群の雲
・の … 格助詞
・かかり … ラ行四段活用の動詞「かかる」の連用形
・て … 接続助詞
・少し … 副詞
・暗がりゆき … カ行四段活用の動詞「暗がりゆく」の連用形
○暗がりゆく … 暗くなっていく
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

「わが出家は成就するなりけり。」と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、
「私の出家は成就するのだなあ。」とおっしゃって、歩き出しなさる時に、
・わ … 代名詞
・が … 格助詞
・出家 … 名詞
・は … 係助詞
・成就する … サ行変格活用の動詞「成就す」の連体形
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けり … 詠嘆の助動詞「けり」の終止形
・と … 格助詞
・仰せ … サ行下二段活用の動詞「仰す」の未然形
仰す … 「言ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞
・歩み出で … ダ行下二段活用の動詞「歩み出づ」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連体形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ほど … 名詞
・に … 格助詞
なぜ「わが出家は成就するなり」と言ったのか ⇒ 明るい月のおもてに群雲がかかって辺りが暗くなり、人目につかずに内裏を抜け出しやすくなったから。

弘徽殿の女御の御文の、日ごろ破り残して
(亡くなった)弘徽殿の女御のお手紙で、ふだん破り捨てずに残しておいて
・弘徽殿(こきでん)の女御 … 名詞
・の … 格助詞
・御文 … 名詞
・の … 格助詞
・日ごろ … 名詞
・破(や)り残し … サ行四段活用の動詞「破り残す」の連用形
・て … 接続助詞

御身も放たず御覧じけるをおぼしめし出でて、
御身から離さないでご覧になっていたお手紙をお思い出しになって、
・御身 … 名詞
・も … 係助詞
・放た … タ行四段活用の動詞「放つ」の未然形
・ず … 打消の助動詞「ず」の連用形
・御覧じ … サ行変格活用の動詞「御覧ず」の連用形
御覧ず … 「見る」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・を … 格助詞
・思し召し出で … ダ行下二段活用の動詞「思し召し出づ」の連用形
思し召し出づ … 「思ひ出づ」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞

「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし、
「しばらく(待て)。」とおっしゃって、取りにお入りになった時のことですよ、
・しばし … 副詞
○しばし〜しばらく
・とて … 格助詞
・取り … ラ行四段活用の動詞「取る」の連用形
・に … 格助詞
・入り … ラ行四段活用の動詞「入る」の連用形
・おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
おはします … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・ほど … 名詞
・ぞ … 係助詞
・かし … 終助詞・念押し

粟田殿の、「いかにかくは思し召しならせおはしましぬるぞ。
粟田殿が、「どうしてこのように(未練がましく)お思いになられてしまうのですか。
・粟田殿 … 名詞
・の … 格助詞
・いかに … 副詞
・かく … 副詞
・は … 係助詞
・思し召しなら … ラ行四段活用の動詞「思し召しなる」の未然形
思し召しなる … 「思ひなる」の尊敬語 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
おはします … 尊敬の補助動詞 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・ぬる … 完了の助動詞「ぬ」の連体形
・ぞ … 係助詞・強意(「終助詞・念押し」とする説もある)

ただ今過ぎば、おのづから障りも出でまうで来なむ。」と、そら泣きし給ひけるは。
今が過ぎたら、自然と支障も出てまいるでしょう。」と、うそ泣きをなさったのは。
・ただ今 … 名詞
○ただ今 … 現在、今
・過ぎ … ガ行上二段活用の動詞「過ぐ」の未然形
・ば … 接続助詞
・おのづから … 副詞
おのづから … 自然に
・障(さわ)り … 名詞
○障り … 障害となる物事
・も … 係助詞
・出でまうで来(き) … カ行変格活用の動詞「出でまうで来(く)」の連用形
出でまうで来 … 「出で来」の丁寧語 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・な … 強意の助動詞「ぬ」の未然形
・む … 推量の助動詞「む」の終止形
・と … 格助詞
・そら泣き … 名詞
・し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・は … 係助詞
「そら泣き」したのはなぜか ⇒ 花山天皇が今日の出家に積極的でないように感じた粟田殿は、うそ泣きして、一緒に出家することになっている自分が、花山天皇が今日の出家に積極的でないことを悲しんでいるように見せかけて、なんとしても花山天皇を今日出家させようと思っているから。

さて、土御門より東ざまに率て出だし参らせ給ふに、
さて、(粟田殿が)土御門大路から東の方に(天皇を)連れ出し申し上げなさる時に、
・さて … 接続詞
・土御門(つちみかど) … 名詞
・より … 格助詞
・東ざま … 名詞
○ざま(接尾語) … 〜の方
・に … 格助詞
・率(い) … ワ行上一段活用の動詞「率る」の連用形
・て … 接続助詞
・出だし … サ行四段活用の動詞「出だす」の連用形
・参らせ … サ行下二段活用の動詞「参らす」の連用形
参らす … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連体形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・に … 格助詞

晴明が家の前を渡らせ給へば、自らの声にて、
(安倍)晴明の家の前をお通りなさると、(晴明)自身の声で、
・晴明(せいめい) … 名詞
・が … 格助詞
・家 … 名詞
・の … 格助詞
・前 … 名詞
・を … 格助詞
・渡ら … ラ行四段活用の動詞「渡る」の未然形
渡る … 通る
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給へ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の已然形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・ば … 接続助詞
・自ら … 名詞
・の … 格助詞
・声 … 名詞
・にて … 格助詞

手をおびたたしくはたはたと打ちて、
手を激しくぱちぱちとたたいて、
・手 … 名詞
・を … 格助詞
・おびたたしく … シク活用の形容詞「おびたたし」の連用形
○おびたたし … 激しい
・はたはたと … 副詞
○はたと … たたいたり、蹴ったりする音の形容
・打ち … タ行四段活用の動詞「打つ」の連用形
・て … 接続助詞

「帝王おりさせ給ふと見ゆる天変ありつるが、
「天皇がご退位なさると思われる天の異変があったが、
・帝 … 名詞
・おり … ラ行上二段活用の動詞「おる」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形 ⇒ 晴明から花山天皇への敬意
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の終止形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 晴明から花山天皇への敬意
・と … 格助詞
・見ゆる … ヤ行下二段活用の動詞「見ゆ」の連体形
見ゆ … 思われる
・天変(てんぺん) … 名詞
○天変 … 天空に起こる異常な現象
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・つる … 完了の助動詞「つ」の連体形
・が … 接続助詞

すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。
既に(ご退位は)済んでしまったと思われるなあ。参内して奏上しよう。
・すでに … 副詞
・なり … ラ行四段活用の動詞「なる」の連用形
なる … 完成する
・に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形
・と … 格助詞
・見ゆる … ヤ行下二段活用の動詞「見ゆ」の連体形
・かな … 終助詞・詠嘆
・参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
参る … 参内する(謙譲語) ⇒ 晴明から天皇への敬意
・て … 接続助詞
・奏せ … サ行変格活用の動詞「奏す」の未然形
奏す … 奏上する(謙譲語) ⇒ 晴明から天皇への敬意
・む … 意志の助動詞「む」の終止形

車に装束とうせよ。」と言ふ声聞かせ給ひけむ、
車に支度を早くしろ。」と言う声をお聞きになった(天皇のお気持ちは)、
・車 … 名詞
・に … 格助詞
・装束(そうぞく) … 名詞
○装束 … 支度
・とう … 副詞(音便)
・せよ … サ行変格活用の動詞「す」の命令形
・と … 格助詞
・言ふ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連体形
・声 … 名詞
・聞か … カ行四段活用の動詞「聞く」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・けむ … 過去推量の助動詞「けむ」の連体形

さりともあはれには思し召しけむかし。
覚悟の上のご出家とはいえ、しみじみと感慨深くお思いになったでしょうよ。
・さりとも … 接続詞
○さりとも … そうはいっても
・あはれに … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形
・は … 係助詞
・思し召し … サ行四段活用の動詞「思し召す」の連用形
思し召す … 「思ふ」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・けむ … 過去推量の助動詞「けむ」の終止形
・かし … 終助詞・念押し

「かつがつ、式神一人内裏に参れ。」と申しければ、
(晴明が)「とりあえず、式神一人宮中へ参上せよ。」と申しましたところ、
・かつがつ … 副詞
○かつがつ … とりあえず
・式神(しきがみ) … 名詞
・一人 … 名詞
・内裏(だいり) … 名詞
・に … 格助詞
・参れ … ラ行四段活用の動詞「参る」の命令形
参る … 参上する(謙譲語) ⇒ 晴明から天皇への敬意
・と … 格助詞
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から式神への敬意
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

目には見えぬものの、戸をおしあけて、御後ろをや見参らせけむ、
目には見えない何かが、戸を押し開けて、(天皇の)後ろ姿を見申し上げたのでしょうか、
・目 … 名詞
・に … 格助詞
・は … 係助詞
・見え … ヤ行下二段活用の動詞「見ゆ」の未然形
・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・もの … 名詞
もの … 超自然的なもの
・の … 格助詞
・戸 … 名詞
・を … 格助詞
・押し開け … カ行下二段活用の動詞「押し開く」の連用形
・て … 接続助詞
・御後ろ … 名詞
・を … 格助詞
・や … 係助詞・疑問
・見 … マ行上一段活用の動詞「見る」の連用形
・参らせ … サ行下二段活用の動詞「参らす」の連用形
参らす … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・けむ … 過去推量の助動詞「けむ」の連体形(結び)

「ただ今、これより過ぎさせおはしますめり。」といらへけりとかや。
「ちょうど今、ここをお通りになっているようです。」と答えたとかいうことです。
・ただ今 … 副詞
・これ … 代名詞
・より … 格助詞
・過ぎ … ガ行下二段活用の動詞「過ぐ」の未然形
・させ … 尊敬の助動詞「さす」の連用形、式神から花山天皇への敬意
・おはします … サ行四段活用の動詞「おはします」の終止形
おはします … 尊敬の補助動詞 ⇒ 式神から花山天皇への敬意
・めり … 推定の助動詞「めり」の終止形
・と … 格助詞
・いらへ … ハ行下二段活用の動詞「いらふ」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形
・と … 格助詞
・か … 係助詞
・や … 間投助詞

その家、土御門町口なれば、御道なりけり。
その家は、土御門大路と町口小路の交わる所だったので、(天皇の)お通り道だったのです。
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・家 … 名詞
・土御門町口(まちぐち) … 名詞
・なれ … 断定の助動詞「なり」の已然形
・ば … 接続助詞
・御道 … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

花山寺におはしまし着きて、御髪おろさせ給ひて後にぞ、粟田殿は、
(天皇が)花山寺にお着きになって、ご剃髪なさった後になって、粟田殿は、
・花山寺 … 名詞
・に … 格助詞
・おはしまし着き … カ行四段活用の動詞「おはしまし着く」の連用形
おはしまし着く … 「行き着く」の尊敬語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞
・御髪(みぐし) … 名詞
・おろさ … サ行四段活用の動詞「おろす」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞
・後 … 名詞
・に … 格助詞
・ぞ … 係助詞
・粟田殿 … 名詞
・は … 係助詞

「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え、
「退出いたしまして、(父の)大臣にも、(出家前の)変わらない姿を、もう一度見せ、
・まかり出で … 行下二段活用の動詞「まかり出づ」の連用形
まかり出づ … 「出づ」の謙譲語 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・て … 接続助詞
・大臣(おとど) … 名詞
・に … 格助詞
・も … 係助詞
・変はら … ラ行四段活用の動詞「変はる」の未然形
・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・姿 … 名詞
・いま … 副詞
・一度 … 名詞
・見え … ヤ行下二段活用の動詞「見ゆ」の連用形
見ゆ … 見せる
「変はらぬ姿」は誰のどのような姿か ⇒ 粟田殿の出家する前の姿

かくと案内申して、必ず参り侍らむ。」と申し給ひければ、
こうこうと事情を申し上げて、必ず戻って参りましょう。」と申し上げなさったので、
・かく … 副詞
かく … このように
・と … 格助詞
・案内(あない) … 名詞
案内 … 物事の内情
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 粟田殿から父の大臣への敬意
・て … 接続助詞
・必ず … 副詞
・参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
参る … 参上する(謙譲語) ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・侍ら … ラ行変格活用の動詞「侍り」の未然形
侍り … 丁寧の補助動詞 ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・む … 意志の助動詞「む」の終止形
・と … 格助詞
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 「言ふ」の謙譲語 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

「朕をば謀るなりけり。」とてこそ泣かせ給ひけれ。
(天皇は)「私をだましたのだなあ。」とおっしゃってお泣きになられました。
・朕(われ) … 代名詞
・を … 格助詞
・ば … 係助詞
・謀(はか)る … ラ行四段活用の動詞「謀る」の連体形
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けり … 詠嘆の助動詞「けり」の終止形
・とて … 格助詞
・こそ … 係助詞・強意
・泣か … カ行四段活用の動詞「泣く」の未然形
・せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形(結び)

あはれに悲しきことなりな。日ごろ、よく、
しみじみとおいたわしく悲しいことであるなあ。(粟田殿が)常日頃、よく、
・あはれに … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形
あはれなり … かわいそうだ
・悲しき … シク活用の形容詞「悲し」の連体形
・こと … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の終止形
・な … 終助詞・詠嘆
・日ごろ … 名詞
・よく … 副詞

「御弟子にて候はむ。」と
「(天皇のご出家の折は自分も出家して)お弟子としてお仕えしましょう。」と
・御弟子(みでし) … 名詞
・にて … 格助詞
・候は … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の未然形
候ふ … お仕えする(謙譲語) ⇒ 粟田殿から花山天皇への敬意
・む … 意志の助動詞「む」の終止形
・と … 格助詞

契りて、すかし申し給ひけむが恐ろしさよ。
約束して、だまし申し上げなさったというのは恐ろしいことですよ。
・契り … ラ行四段活用の動詞「契る」の連用形
・て … 接続助詞
・すかし … サ行四段活用の動詞「すかす」の連用形
○すかす … だます
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から花山天皇への敬意
・給ひ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連用形
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・けむ … 過去伝聞の助動詞「けむ」の連体形
・が … 格助詞
・恐ろしさ … 名詞
・よ … 間投助詞

東三条殿は、もしさることやし給ふとあやふさに、
東三条殿は、もしや(粟田殿が)そのようなことをなさるのではないかと心配で、
・東三条(とうさんじよう)殿 … 名詞
・は … 係助詞
・もし … 副詞
○もし … もしかしたら
・さる … ラ行変格活用の動詞「さり」の連体形(連体詞とする説もある)
さる … そのような
・こと … 名詞
・や … 係助詞・疑問
・し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・給ふ … ハ行四段活用の動詞「給ふ」の連体形(結び)
給ふ … 尊敬の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・と … 格助詞
・あやふさ … 名詞
○あやふさ … 気がかり、心配
・に … 格助詞
「さることやし給ふ」とは、誰が何をするということか ⇒ 粟田殿が出家すること

さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふ
(こういう警護に)ふさわしく思慮分別のある人々、誰それという
・さる … ラ行変格活用の動詞「さり」の連体形
・べく … 当然の助動詞「べし」の連用形
・おとなしき … 活用の形容詞「おとなし」の連体形
おとなし … 思慮分別がある
・人々 … 名詞
・なにがし … 代名詞
○なにがし … 誰それ
・かがし … 代名詞
○かがし … 誰それ
・と … 格助詞
・いふ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の連体形

いみじき源氏の武者たちをこそ、御送りに添へられたりけれ。
優れた源氏の武者たちを、お見送りに添えられていたということです。
・いみじき … 活用の形容詞「いみじ」の連体形
いみじ … 優れている
・源氏 … 名詞
・の … 格助詞
・武者(むさ)たち … 名詞
・を … 格助詞
・こそ … 係助詞・強意
・御送り … 名詞
○送り … 見送り
・に … 格助詞
・添へ … ハ行下二段活用の動詞「添ふ」の未然形
・られ … 尊敬の助動詞「らる」の連用形 ⇒ 筆者から東三条殿への敬意
・たり … 存続の助動詞「たり」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形(結び)

京のほどは隠れて、堤の辺りよりぞうち出で参りける。
京の町中は隠れて、(鴨川の)堤の辺りから姿を現してお供いたしたそうです。
・京 … 名詞
・の … 格助詞
・ほど … 名詞
・は … 係助詞
・隠れ … ラ行下二段活用の動詞「隠る」の連用形
・て … 接続助詞
・堤(つつみ) … 名詞
・の … 格助詞
・辺(わた)り … 名詞
・より … 格助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・うち出で … ダ行下二段活用の動詞「うち出づ」の連用形
・参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
参る … 「行く」の謙譲語 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)

寺などにては、もし、おして人などやなし奉るとて、
寺などでは、もしや、無理に誰かが(粟田殿を)出家させ申し上げはしないかと思って、
・寺 … 名詞
・など … 副助詞
・にて … 格助詞
・は … 係助詞
・もし … 副詞
・おして … 副詞
○おして … 無理矢理に
・人 … 名詞
・など … 副助詞
・や … 係助詞・疑問
・なし … サ行四段活用の動詞「なす」の連用形
・奉る … ラ行四段活用の動詞「奉る」の連体形(結び)
奉る … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・とて … 格助詞
「なし奉る」とは具体的に誰をどのようにすることか ⇒ 粟田殿を出家させること

一尺ばかりの刀どもを抜きかけてぞ守り申しける。
一尺ばかりの刀を抜きかけてお守り申し上げたということです。
・一尺(ひとさく) … 名詞
・ばかり … 副助詞
・の … 格助詞
・刀ども … 名詞
・を … 格助詞
・抜きかけ … カ行下二段活用の動詞「抜きかく」の連用形
・て … 接続助詞
・ぞ … 係助詞・強意
・守り … ラ行四段活用の動詞「守る」の連用形
・申し … サ行四段活用の動詞「申す」の連用形
申す … 謙譲の補助動詞 ⇒ 筆者から粟田殿への敬意
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)

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