白河の関・奥の細道

心もとなき日数重なるままに、
気持ちが落ち着かない日々が過ぎるうちに、
・心もとなき … ク活用の形容詞「心もとなし」の連体形
心もとなき … 気持ちが先走って落ち着かない
・日数(ひかず) … 名詞
・重なる … ラ行四段活用動詞「重なる」の連体形
・まま … 名詞
・に … 格助詞
○~ままに … ~につれて

白河の関にかかりて旅心定まりぬ。
白河の関にかかって旅人らしい心に落ち着いた。
・白河の関 … 名詞
・に … 格助詞
・かかり … ラ行四段活用動詞「かかる」の連用形
・て … 接続助詞
・旅心 … 名詞
・定まり … ラ行四段活用動詞「定まる」の連用形
・ぬ … 完了の助動詞「ぬ」の終止形

「いかで都へ」と便り求めしも理なり。
「なんとかして都へ」と通信の手段を求めたのも当然だ。
・いかで … 副詞
いかで … どうにかして(願望)
・都 … 名詞
・へ … 格助詞
・と … 格助詞
・便り … 名詞
便り … 頼みとなるもの
・求め … マ行下二段活用動詞「求む」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・も … 係助詞
・理(ことわり)なり … ナリ活用の形容動詞「理なり」の終止形
理なり … もっともである

中にもこの関は三関の一にして、風騒の人、心をとどむ。
中でもこの関は三関の一つであって、詩文を作り楽しむ人が、気持ちを寄せた。
・中 … 名詞
・に … 格助詞
・も … 係助詞
・こ … 代名詞
・の … 格助詞
・関 … 名詞
・は … 係助詞
・三関(さんかん) … 名詞
・の … 格助詞
・一(いつ) … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・して … 接続助詞
・風騒(ふうそう) … 名詞
・の … 格助詞
・人 … 名詞
○風騒の人 … 詩文を作り楽しむ人
・心 … 名詞
・を … 格助詞
・とどむ … マ行下二段活用動詞「とどむ」の終止形
○とどむ … 気持ちを集中する

秋風を耳に残し、紅葉を面影にして、
吹いている秋風の響きを心に聞き、散りしいている紅葉の情景を心に見て、
・秋風 … 名詞
・を … 格助詞
・耳 … 名詞
・に … 格助詞
・残し … サ行四段活用動詞「残す」の連用形
・紅葉(もみじ) … 名詞
・を … 格助詞
・面影 … 名詞
・に … 格助詞
・し … サ行変格活用動詞「す」の連用形
・て … 接続助詞

青葉の梢なほあはれなり。
青葉の梢は、やはりしみじみとした情趣がある。
・青葉 … 名詞
・の … 格助詞
・梢(こずえ) … 名詞
・なほ … 副詞
なほ … やはり
・あはれなり … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の終止形
あはれなり … しみじみとした情趣がある

卯の花の白妙に、茨の花の咲き添ひて、
卯の花の白い色に、野ばらが咲き加わって、
・卯(う)の花 … 名詞
・の … 格助詞
・白妙(しろたえ) … 名詞
・に … 格助詞
・茨(むばら)の花 … 名詞
・の … 格助詞
・咲き添ひ … ハ行四段活用動詞「咲き添ふ」の連用形
・て … 接続助詞

雪にも越ゆる心地ぞする。
雪の折にでも越えている気持ちがする。
・雪 … 名詞
・に … 格助詞
・も … 係助詞
・越ゆる … ヤ行下二段活用動詞「越ゆ」の連体形
・心地 … 名詞
・ぞ … 係助詞・強調
・する … サ行変格活用動詞「す」の連体形(結び)

古人冠を正し衣装を改めしことなど、
古人が冠をかぶり直し衣服をきちんと整えたことなどが、
・古人 … 名詞
・冠 … 名詞
・を … 格助詞
・正し … サ行四段活用動詞「正す」の連用形
・衣装 … 名詞
・を … 格助詞
・改め … マ行下二段活用動詞「改む」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・こと … 名詞
・など … 副助詞

清輔の筆にもとどめ置かれしとぞ。
清輔の書物にも書き残されたということだ。
・清輔(きよすけ) … 名詞
・の … 格助詞
・筆 … 名詞
・に … 格助詞
・も … 係助詞
・とどめ置か … カ行四段活用動詞「とどめ置く」の未然形
○とどめ置く … あとに残しておく
・れ … 受身の助動詞「る」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・と … 格助詞
・ぞ … 係助詞

  卯の花をかざしに関の晴れ着かな
  咲いている卯の花を髪にさして、それを晴れ着にして関を越えることだよ。
  ・卯の花 … 名詞
  ・を … 格助詞
  ・かざし … 名詞
  ○かざし … 花や枝などを折って髪にさしたもの
  ・に … 格助詞
  ・関 … 名詞
  ・の … 格助詞
  ・晴れ着 … 名詞
  ・かな … 終助詞・詠嘆
  ○季語「卯の花」、季節「夏」、切れ字「かな」

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