ある者小野道風の書ける・徒然草

ある者、小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを、
ある者が、小野道風の書いた和漢朗詠集といって持っていたものを、
・ある … 連体詞
・者 … 名詞
・小野道風(おののとうふう) … 名詞
・の … 格助詞
・書け … カ行四段活用の動詞「書く」の命令形
・る … 完了の助動詞「り」の連体形
・和漢朗詠集(わかんろうえいしゆう) … 名詞
・とて … 格助詞
・持ち … タ行四段活用の動詞「持つ」の連用形
・たり … 存続の助動詞「たり」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・を … 格助詞

ある人、「御相伝、浮けることには侍らじなれども、
ある人が、「代々の受け伝えは、根拠のないことではございませんでしょうが、
・ある … 連体詞
・人 … 名詞
・御相伝(ごそうでん) … 名詞
○相伝 … 代々の受け伝え
・浮け … カ行四段活用の動詞「浮く」の命令形
○浮く … 確かでない
・る … 存続の助動詞「り」の連体形
・こと … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・は … 係助詞
・侍(はべ)ら … ラ行変格活用の動詞「侍り」の未然形
侍り … 「あり」の丁寧語 ⇒ ある人のある者への敬意
・じ … 打消推量の助動詞「じ」の連体形
・なれ … 断定の助動詞「なり」の已然形
・ども … 接続助詞

四条大納言撰ばれたるものを、道風書かんこと、
四条大納言がお撰びになったものを、道風が書くようなことは、
・四条大納言 … 名詞
・撰ば … バ行四段活用の動詞「撰ぶ」の未然形
・れ … 尊敬の助動詞「る」の連用形 ⇒ ある人の四条大納言への敬意
・たる … 完了の助動詞「たり」の連体形
・もの … 名詞
・を … 格助詞
・道風 … 名詞
・書か … カ行四段活用の動詞「書く」の未然形
・ん … 婉曲の助動詞「ん」の連体形
・こと … 名詞

時代やたがひ侍らん。おぼつかなくこそ。」と言ひければ、
時代が食い違いはしませんでしょうか。疑わしくございます。」と言ったところ、
・時代 … 名詞
・や … 係助詞・疑問
・たがひ … ハ行四段活用の動詞「たがふ」の連用形
○たがふ … 食い違う
・侍ら … ラ行変格活用の補助動詞「侍り」の未然形
侍り … 丁寧の補助動詞 ⇒ ある人のある者への敬意
・ん … 推量の助動詞「ん」の連体形(結び)
・おぼつかなく … ク活用の形容詞「おぼつかなし」の連用形
おぼつかなし … 疑わしい
・こそ … 係助詞
・と … 格助詞
・言ひ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連用形
・けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ば … 接続助詞

「さ候へばこそ、世にありがたきものには侍りけれ。」とて、
「そうでございますから、たいへん珍しいものでございますよ。」と言って、
・さ … 副詞
・候(そうら)へ … ハ行四段活用の動詞「候ふ」の已然形
候ふ … 「あり」の丁寧語 ⇒ ある者のある人への敬意
・ば … 接続助詞
・こそ … 係助詞・強調
・世に … 副詞
世に … 非常に
・ありがたき … ク活用の形容詞「ありがたし」の連体形
ありがたき … 珍しい
・もの … 名詞
・に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・は … 係助詞
・侍り … ラ行変格活用の動詞「侍り」の連用形
侍り … 「あり」の丁寧語 ⇒ ある者のある人への敬意
・けれ … 詠嘆の助動詞「けり」の已然形(結び)
・とて … 格助詞

いよいよ秘蔵しけり。
ますます大切にしまっておいたということだ。
・いよいよ … 副詞
・秘蔵(ひぞう)し … サ行変格活用の動詞「秘蔵す」の連用形
○秘蔵す … 大切にしまっておく
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

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