東下り・伊勢物語2

行き行きて、駿河の国に至りぬ。
どんどん行って、駿河の国に着いた。
・行き … カ行四段活用の動詞「行く」の連用形
・行き … カ行四段活用の動詞「行く」の連用形
・て … 接続助詞
・駿河の国 … 名詞
・に … 格助詞
・至り … ラ行四段活用の動詞「至る」の連用形
・ぬ … 完了の助動詞「ぬ」の終止形

宇津の山に至りて、わが入らむとする道は、
宇津の山まで行って、自分が分け入ろうとする道は、
・宇津の山 … 名詞
・に … 格助詞
・至り … ラ行四段活用の動詞「至る」の連用形
・て … 接続助詞
・わ … 代名詞
・が … 格助詞
・入ら … ラ行四段活用の動詞「入る」の未然形
・む … 意志の助動詞「む」の終止形
・と … 格助詞
・する … サ行変格活用の動詞「す」の連体形
・道 … 名詞
・は … 係助詞

いと暗う細きに、蔦・楓は茂り、もの心細く、
ひどく暗く細い上に、蔦や楓が茂り、なんとなく心細く、
・いと … 副詞
・暗う … ク活用の形容詞「暗し」の連用形(音便)
・細き … ク活用の形容詞「細し」の連体形
・に … 接続助詞
・蔦 … 名詞
・楓 … 名詞
・は … 係助詞
・茂り … ラ行四段活用の動詞「茂る」の連用形
・もの心細く … ク活用の形容詞「もの心細し」の連用形

すずろなるめを見ることと思ふに、修行者会ひたり。
思いがけない辛いめに会うことだと思っていると、修行者が出会った。
・すずろなる … ナリ活用の形容動詞「すずろなり」の連体形
・め … 名詞
・を … 格助詞
・見る … マ行上一段活用の動詞「見る」の連体形
・こと … 名詞
・と … 格助詞
・思ふ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連体形
・に … 接続助詞
・修行者 … 名詞
・会ひ … ハ行四段活用の動詞「会ふ」の連用形
・たり … 完了の助動詞「たり」の終止形

「かかる道は、いかでかいまする。」と
「このような道に、どうしていらっしゃるのですか。」と
・かかる … ラ行変格活用の動詞「かかり」の連体形
・道 … 名詞
・は … 係助詞
・いかで … 副詞
・か … 係助詞
・いまする … サ行変格活用の動詞「います」の連体形
・います … 「あり」の尊敬語 ⇒ 「修行者」から「男たち」への敬意
・と … 格助詞

言ふを見れば、見し人なりけり。
言うのを見ると、見知っている人だった。
・言ふ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連体形
・を … 格助詞
・見れ … マ行上一段活用の動詞「見る」の已然形
・ば … 接続助詞
・見 … マ行上一段活用の動詞「見る」の連用形
・し … 過去の助動詞「き」の連体形
・人 … 名詞
・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

京に、その人の御もとにとて、文書きてつく。
京に、あの人の御もとにと思って、手紙を書いてことづける。
・京 … 名詞
・に … 格助詞
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・人 … 名詞
・の … 格助詞
・御もと … 名詞
・に … 格助詞
・とて … 格助詞
・文 … 名詞
・書き … カ行四段活用の動詞「書く」の連用形
・て … 接続助詞
・つく … カ行下二段活用の動詞「つく」の終止形

  駿河なる宇津の山べのうつつにも
  駿河の国の宇津の山の辺りにいますが、宇津の山といえば、うつつにも、
  ・駿河 … 名詞
  ・なる … 存在の助動詞「なり」の連体形
  ・宇津 … 名詞
  ・の … 格助詞
  ・山べ … 名詞
  ・の … 格助詞
  ・うつつ … 名詞
  ・に … 格助詞
  ・も … 係助詞

  夢にも人にあはぬなりけり
  夢にもあなたに会わないことだよ。
  ・夢 … 名詞
  ・に … 格助詞
  ・も … 係助詞
  ・人 … 名詞
  ・に … 格助詞
  ・あは … ハ行四段活用の動詞「あふ」の未然形
  ・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
  ・なり … 断定の助動詞「なり」の連用形
  ・けり … 詠嘆の助動詞「けり」の終止形

富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。
富士の山を見ると、五月の末に、雪がたいそう白く降り積もっている。
・富士の山 … 名詞
・を … 格助詞
・見れ … マ行上一段活用の動詞「見る」の已然形
・ば … 接続助詞
・五月 … 名詞
・の … 格助詞
・つごもり … 名詞
・に … 格助詞
・雪 … 名詞
・いと … 副詞
・白う … ク活用の形容詞「白し」の連用形(音便)
・降れ … ラ行四段活用の動詞「降る」の命令形
・り … 存続の助動詞「り」の終止形

  時知らぬ山は富士の嶺
  時節をわきまえない山は富士の嶺だ。
  ・時 … 名詞
  ・知ら … ラ行四段活用の動詞「知る」の未然形
  ・ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
  ・山 … 名詞
  ・は … 係助詞
  ・富士の嶺 … 名詞

  いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ
  今をいつだと思って鹿の子まだらに雪が降っているのだろうか。
  ・いつ … 代名詞
  ・とて … 格助詞
  ・か … 係助詞
  ・鹿の子まだら … 名詞
  ・に … 格助詞
  ・雪 … 名詞
  ・の … 格助詞
  ・降る … ラ行四段活用の動詞「降る」の終止形
  ・らむ … 原因推量の助動詞「らむ」の連体形

その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ね上げたらむほどして、
その山は、都で例えるならば、比叡山を二十くらい重ね上げたような高さで、
・そ … 代名詞
・の … 格助詞
・山 … 名詞
・は … 係助詞
・ここ … 代名詞
・に … 格助詞
・たとへ … ハ行下二段活用の動詞「たとふ」の未然形
・ば … 接続助詞
・比叡の山 … 名詞
・を … 格助詞
・二十 … 名詞
・ばかり … 副助詞
・重ね上げ … ガ行下二段活用の動詞「重ね上ぐ」の連用形
・たら … 存続の助動詞「たり」の未然形
・む … 婉曲の助動詞「む」の連体形
・ほど … 名詞
・して … 格助詞

なりは塩尻のやうになむありける。
形は塩尻のようだった。
・なり … 名詞
・は … 係助詞
・塩尻 … 名詞
・の … 格助詞
・やうに … 比況の助動詞「やうなり」の連用形
なむ … 係助詞・強調
・ … 係助詞
・あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形(結び)

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