小野篁、広才のこと

古文

今は昔、小野篁といふ人おはしけり。
今となっては昔のことだが、小野篁という人がいらっしゃった。
 今 … 名詞
 は … 係助詞
 昔 … 名詞
 小野篁 … 名詞
 と … 格助詞
 いふ … 四段活用の動詞「いふ」連体形
 人 … 名詞
 おはし … 四段活用の動詞「おはす」連用形
 けり … 過去の助動詞「けり」終止形

嵯峨の帝の御時に、内裏に札を立てたりけるに、「無悪善」と書きたりけり。
嵯峨天皇のご在位の時に、宮中に札を立てたが、「無悪善」と書いてあった。
 嵯峨の帝 … 名詞
 の … 格助詞
 御時 … 名詞
 に … 格助詞
 内裏 … 名詞
 に … 格助詞
 札 … 名詞
 を … 格助詞
 立て … 下二段活用の動詞「立つ」連体形
 たり … 完了の助動詞「たり」連用形
 ける … 過去の助動詞「けり」連体形
 に … 接続助詞
 無悪善 … 名詞
 と … 格助詞
 書き … 四段活用の動詞「書く」連用形
 たり … 存続の助動詞「たり」連用形
 けり … 過去の助動詞「けり」終止形

帝、篁に、「読め。」と仰せられたりければ、「読みは読み候ひなむ。
帝が、篁に、「読め。」とおっしゃられたので、「読むことは読みましょう。
 帝 … 名詞
 篁 … 名詞
 に … 格助詞
 読め … 四段活用動詞「読む」命令形
 と … 格助詞
 仰せ … 下二段活用動詞「仰す」未然形
 られ … 尊敬の助動詞「らる」連用形
 たり … 完了の助動詞「たり」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞
 読み … 四段活用動詞「読む」連用形
 は … 係助詞
 読み … 四段活用動詞「読む」連用形
 候ひ … 丁寧の四段活用補助動詞「候ふ」連用形
 な … 強意の助動詞「ぬ」未然形
 む … 意志の助動詞「む」終止形

されど、恐れにて候へば、え申し候はじ。」と奏しければ、
しかし、恐れ多いことでございますので、申し上げられません。」と奏上したところ、
 されど … 接続詞
 恐れ … 名詞
 に … 断定の助動詞「なり」連用形
 て … 接続助詞
 候へ … 四段活用の動詞「候ふ」已然形
 ば … 接続助詞
 え … 副詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 候は … 丁寧の四段活用補助動詞「候ふ」未然形
 じ … 打消意志の助動詞「じ」終止形
 と … 格助詞
 奏し … 四段活用の動詞「奏す」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「ただ申せ。」と、たびたび仰せられければ、
「とにかく申せ。」と、何度もおっしゃられたので、
 ただ … 副詞
 申せ … 四段活用の動詞「申す」命令形
 と … 格助詞
 たびたび … 副詞
 仰せ … 下二段活用の動詞「仰す」未然形
 られ … 尊敬の助動詞「らる」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「『さがなくてよからむ』と申して候ふぞ。されば、君を呪ひ参らせて候ふなり。」と申しければ、
「『さがなくてよからむ』と申しているのですよ。ですから、君をお呪い申し上げているのです。」と申し上げたところ、
 さが … 名詞
 なく … ク活用の形容詞「なし」連用形
 て … 接続助詞
 よから … ク活用の形容詞「よし」の未然形
 む … 推量の助動詞「む」終止形
 と … 格助詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 て … 接続助詞
 候ふ … 四段活用の丁寧の補助動詞「候ふ」連体形
 ぞ … 終助詞
 されば … 接続詞
 君 … 名詞
 を … 格助詞
 呪ひ … 四段活用動詞「呪ふ」連用形
 参らせ … 下二段活用の謙譲の補助動詞「参らす」連用形
 て … 接続助詞
 候ふ … 四段活用の動詞「候ふ」連体形
 なり … 断定の助動詞「なり」終止形
 と … 格助詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「これは、おのれ放ちては、誰か書かむ。」と仰せられければ、
「こんな事は、おまえを除いては、誰が書こうか。」とおっしゃられたので、
 これ … 代名詞
 は … 係助詞
 おのれ … 代名詞
 放ち … 四段活用の動詞「放つ」連用形
 て … 接続助詞
 は … 係助詞
 誰 … 代名詞
 か … 係助詞
 書か … 四段活用の動詞「書く」未然形
 む … 推量の助動詞「む」終止形
 と … 格助詞
 仰せ … 下二段活用の動詞「仰す」未然形
 られ … 尊敬の助動詞「らる」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「さればこそ、申し候はじとは申して候ひつれ。」と申すに、
「ですから、申し上げませんと申し上げたのです。」と申し上げると、
 されば … 接続詞
 こそ … 係助詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 候は … 四段活用の丁寧の補助動詞「候ふ」未然形
 じ … 打消意志の助動詞「じ」終止形
 と … 格助詞
 は … 係助詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 て … 接続助詞
 候ひ … 四段活用の丁寧の補助動詞「候ふ」連用形
 つれ … 完了の助動詞「つ」已然形
 と … 格助詞
 申す … 四段活用の動詞「申す」連体形
 に … 接続助詞

帝、「さて、何も、書きたらむものは、読みてむや。」と仰せられければ、
帝が、「それでは、何でも、文字で書いてあるようなものは、きっと読めるのか。」とおっしゃられたので、
 帝 … 名詞
 さて … 接続詞
 何 … 名詞
 も … 係助詞
 書き … 四段活用の動詞「書く」連用形
 たら … 完了の助動詞「たり」連用形
 む … 婉曲の助動詞「む」連体形
 もの … 名詞
 は … 係助詞
 読み … 四段活用の動詞「読む」連用形
 て … 強意の助動詞「つ」未然形
 む … 推量の助動詞「む」終止形
 や … 係助詞
 と … 格助詞
 仰せ … 下二段活用の動詞「仰す」未然形
 られ … 尊敬の助動詞「らる」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「何にても、読み候ひなむ。」と申しければ、
「何でも、確かに読みましょう。」と申し上げたところ、
 何 … 代名詞
 に … 断定の助動詞「なり」連用形
 て … 接続助詞
 も … 係助詞
 読み … 四段活用の動詞「読む」連用形
 候ひ … 四段活用の丁寧の補助動詞「候ふ」連用形
 な … 強意の助動詞「ぬ」未然形
 む … 意志の助動詞「む」終止形
 と … 格助詞
 申し … 四段活用の動詞「申す」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば …&nbsp接続助詞

片仮名の「ね」文字を十二書かせ給ひて、「読め。」と仰せられければ、
片仮名の「子」文字を十二お書きになられて、「読め。」とおっしゃられたので、
 片仮名 … 名詞
 の … 格助詞
 「ね」文字 … 名詞
 を … 格助詞
 十二 … 名詞
 書か … 四段活用の動詞「書く」未然形
 せ … 尊敬の助動詞「す」連用形
 給ひ … 四段活用の尊敬の補助動詞「給ふ」連用形
 て … 接続助詞
 読め … 四段活用の動詞「読む」命令形
 と … 格助詞
 仰せ … 下二段活用の動詞「仰す」未然形
 られ … 尊敬の助動詞「らる」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

「ねこの子のこねこ、ししの子のこじし。」と読みたりければ、
「猫の子の子猫、獅子の子の子獅子。」と読んだところ、
 ねこ … 名詞
 の … 格助詞
 子 … 名詞
 の … 格助詞
 こねこ … 名詞
 しし … 名詞
 の … 格助詞
 子 … 名詞
 の … 格助詞
 こじし … 名詞
 と … 格助詞
 読み … 四段活用の動詞「読む」連用形
 たり … 完了の助動詞「たり」連用形
 けれ … 過去の助動詞「けり」已然形
 ば … 接続助詞

帝ほほ笑ませ給ひて、事なくてやみにけり。
帝はほほ笑みになられて、おとがめなくて済んだ。
 帝 … 名詞
 ほほ笑ま … 四段活用の動詞「ほほ笑む」未然形
 せ … 尊敬の助動詞「す」連用形
 給ひ … 四段活用の尊敬の補助動詞「給ふ」連用形
 て … 接続助詞
 事なく … ク活用の形容詞「事なし」連用形
 て … 接続助詞
 やみ … 四段活用の動詞「やむ」連用形
 に … 完了の助動詞「ぬ」連用形
 けり … 過去の助動詞「けり」終止形

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プロ家庭教師タカシ むかしの文学