「逆鱗」は龍のあごの下に逆さに生えている一枚の鱗です。それに触れると龍が非常に怒るということから、「天子の怒り、また、目上の人の怒り」を意味します。また、「逆鱗に触れる」とは「天子や目上の人を怒らせてしまうこと」を意味します。
「韓非子・説難」の次のような逸話に由来しています。
そもそも龍という動物は、柔順な性格であり、飼いならして乗ることができる。
しかし、竜の喉の下には逆さに生えた直径1尺の鱗がある。
もし、これに触れる者がいると、必ずその人を殺す。
君主にも同様に逆鱗がある。
自分の意見を述べる者が君主の逆鱗に触れずにいることができれば、もう少しで成功だ。
[ 詳しい解説 ]
夫竜之為虫也、柔可狎而騎也。
夫れ竜の虫たるや、柔なること狎れて騎るべきなり。
それりゆうのちゆうたるや、じゆうなることなれてのるべきなり。
そもそも龍という動物は、従順な性格であり飼いならして乗ることができる。
・ 夫 … そもそも
・ 夫れ(読み:それ)
・ 虫 … 動物の総称
・ 柔 … 従順である
・ 可~ … ~できる(可能)
・ 狎 … 飼いならす
・ 而(置き字・順接) … そして
然其喉下有逆鱗径尺。
然れども其の喉の下に逆鱗の径尺なる有り。
しかれどもそののどのしたにげきりんのけいしやくなるあり。
しかし竜の喉の下には逆さに生えた直径1尺の鱗がある。
・ 然 … しかしながら(逆接)
・ 逆鱗 … 逆さに生えた鱗
・ 径尺 … 直径1尺
若人有嬰之者、則必殺人。
若し人の之に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。
もしひとのこれにふるるものあらば、すなわちかならずひとをころす。
もしこれに触れる者がいると、必ずその人を殺す。
・ 若 … もし(仮定)
・ 若し(読み:もし)
・ ~則 … ~の場合には
・ 則ち(読み:すなわち)
人主亦有逆鱗。
人主も亦逆鱗有り。
じんしゆもまたげきりんあり。
君主にも同様に逆鱗がある。
・ 人主 … 君主
・ 亦 … 同様に
・ 亦(読み:また)
説者能無嬰人主之逆鱗、則幾矣。
説者能く人主の逆鱗に嬰るる無くんば、則ち幾し。
ぜいしやよくじんしゆのげきりんにふるるなくんば、すなわちちかし。
意見を述べる者が君主の逆鱗に触れずにいることができれば、もう少しで成功だ。
・ 説者 … 意見を述べる者
・ 能~ … ~できる(可能)
・ 能く(読み:よく)
・ 幾 … もう少しである